歯周病治療
歯周病治療が治らない理由
歯周病治療で多くの方からいただく質問が、「歯周病は治るんですか?」というものです。
たとえば、「転んでできた傷が完全に消える=元の状態に戻る」ことを「治る」と考えるなら、歯周病は一度発症すると元の健康な状態には戻らない病気といえます。
歯周病は感染症であり、歯を支える骨や歯ぐきが破壊される病気だからです。
しかし、「歯周病菌の増殖を抑え、炎症や出血がなく、歯ぐきの健康な状態を維持できる」という状態を「治る」と定義するなら、歯周病は治すことが可能です。
つまり、再発を防ぎながらコントロールすることが“治る”ということになります。
結論として、正確な診断と適切な治療を行えば、歯周病は改善し、健康な状態を維持することができます。
とはいえ、「なかなか治らない」「治療しても再発してしまう」という方も少なくありません。
歯周病が治りにくい・再発してしまう原因には、主に次の2つの要因が考えられます。
毎日のデンタルケア/生活習慣の影響
歯周病を防ぐうえで最も大切なのは、毎日のデンタルケアでお口を清潔に保つことです。
しかし、歯科医院で正しい磨き方を学ばないまま、自己流の歯磨きを続けていると、歯ぐきに負担がかかり、かえって炎症を悪化させてしまうことがあります。
また、ストレスの多い生活や喫煙・睡眠不足・不規則な食生活なども、体の抵抗力を下げ、お口の中の細菌バランスを崩す原因になります。
その結果、歯周病が進行しやすくなったり、治療後に再発しやすくなることもあります。
日々のケアと生活習慣の見直しが、歯周病の改善と予防の鍵です。
歯科医院の知識や技術が遅れている
歯科医療は日々進歩しており、新しい治療法や研究成果が次々と発表されています。
しかし、今でも一部の歯科医院では、従来の「歯垢や歯石を取るだけ」の治療にとどまっている場合があります。
もちろん、歯垢や歯石の除去は歯周病治療の基本ですが、それだけでは根本的な改善にはつながりません。
近年の研究で、歯周病は特定の細菌が原因で発症・悪化する感染症であることがわかっています。
つまり、原因菌に直接アプローチすることで、より効果的な治療結果が得られるのです。
当院では、歯周病の根本的な原因である「細菌」そのものに対する治療を行っています。
これにより、歯や歯ぐきへの負担を抑えながら、早期の改善と再発予防を目指します。
「もう歯周病は治らない…」「抜歯しかないと言われた…」
そんな方も、どうぞ一度ご相談ください。
できるだけ歯を残すための最適な治療法をご提案いたします。
歯周病に特化した「治療方法」
歯周病を改善するためには、まず的確な診査・診断を行い、その結果をもとに最も適した治療法を選択することが重要です。
当院では、精密な検査によってお口の状態をしっかりと把握し、患者さん一人ひとりの症状やリスクに合わせた最適な治療プランをご提案しています。
ここでは、当院が行っている独自の検査方法をご紹介します。
「CT検査」で見えない部分まで正確に把握
CTでは、顎の骨の状態や歯の形をさまざまな角度から立体的に確認することができます。
特に重度の歯周病では、歯周ポケットが深くなり、歯ぐきや骨の形が凸凹していることが多く、レントゲンだけでは状態を正確に把握しづらい場合があります。
CT撮影によって、これまで見えなかった部分の情報を立体画像として詳細に把握できるため、より正確な診断と的確な治療計画を立てることが可能になります。
「レーザー」による殺菌
当院では、歯周病の原因となる歯周病菌を効果的に除去するために「CO₂(炭酸ガス)レーザー」を使用しています。
レーザーにはさまざまな効果がありますが、特に高い殺菌作用があり、歯ぐきの深い部分までしっかりと殺菌することができます。
患部にレーザーを照射することで、細菌の繁殖を抑え、炎症や出血の改善を促します。
また、痛みや腫れを抑える効果も期待できるため、
患者さんの身体への負担が少ない治療としても有効です。
保険で受けられる「エアフロークリーニング」
エアフローとは、細かなパウダーを歯の表面に吹き付けて、歯の汚れや着色、バイオフィルム(細菌の膜)をやさしく除去する機器です。
歯ぐきへの負担が少なく、仕上がりも非常にきれいになります。
通常、エアフローによるクリーニングは自費診療(自由診療)で行う医院が多いのですが、当院では保険診療の範囲内で対応しています。
ご希望の方は、どうぞお気軽にお声がけください。
短期間で歯周病を改善する
歯周病治療
一般的な歯周病治療では、歯石除去を4〜6回に分けて行うのが一般的です。
しかし、この方法では治療が終わっていない部分から、治療済みの部分へと細菌が再感染してしまうことがあります。
特に重度の歯周病では、このような細菌感染のリスクが高いといわれています。
当院では、こうした再感染を防ぐために、
「フルマウスディスインフェクション(FMD)療法」を導入しています。
FMD療法とは、1回または1週間以内の短期間で全ての歯石除去を行う治療法です。
同時に抗生物質や抗菌薬を併用し、お口全体の歯周病菌を徹底的に除去します。
この方法により、
短期間での治療完了
再感染リスクの軽減
効果的な炎症改善
が期待できます。
通院回数を少なくしたい方や、効率的に歯周病を改善したい方におすすめの治療法です。
抜歯しない治療
歯周組織再生療法
歯周病が進行すると、歯を支える組織や顎の骨が歯周病菌によって破壊されていきます。
重度になると、組織の多くが失われ、歯がグラグラと動いてしまう状態になることもあります。
一般的には、このような場合「抜歯しか方法がない」と診断されることがありますが、当院では、歯周組織再生療法を用いて失われた組織や骨の再生を促し、抜歯を避ける治療を行っています。
歯周組織再生療法は、次のような方に適した治療法です:
顎の骨や歯周組織を回復させ、歯の寿命を延ばしたい方
歯周病で歯を抜かずに残したい方
この治療では、特殊な薬剤や再生材料を使用して、破壊された部分の再生を促します。
ただし、お口の状態や全身の健康状態によっては、適応できない場合もあります。
組織の再生を促す薬剤「エムドゲイン」と「リグロス」
歯周組織再生療法では、「エムドゲイン」や「リグロス」といった薬剤を使用し、失われた骨や歯周組織の再生を促進します。
エムドゲインは、子どもの歯が生える際に関わる重要なたんぱく質の一種で、組織の再生を助け、破壊された骨を回復させる効果が期待できます。
世界40ヶ国以上で使用されており、副作用がほとんどなく安全性が高い薬剤として認められています。
一方、リグロスもエムドゲインと同様に、歯ぐきや骨の再生を促す作用を持つ薬剤です。
2016年からは、リグロスを用いた歯周組織再生療法が保険適用となり、より多くの患者さんが安心して受けられる治療となりました。
01
ポケット内の清掃
02
歯肉を切開し歯根表面の清掃
03
薬剤を塗布
04
縫合して作業完了
誘導組織再生治療「GTR法」
GTR法(Guided Tissue Regeneration)とは、歯周病によって失われた骨や歯周組織の再生を促す治療法です。
歯垢や歯石などの汚染物質をしっかり取り除くと、本来は骨や組織が自然に再生しようとする力が働きます。
しかし、再生のスピードは歯ぐきよりも遅く、歯ぐきが先に入り込んでしまうことで、骨や組織が十分に再生できない場合があります。
そこで行うのが「GTR法」です。
この治療では、メンブレン(特殊な膜)で歯ぐきの侵入を防ぎながら、その下で骨や組織が再生できるスペースを確保します。
膜の下で時間をかけて、必要な骨や歯周組織が安定的に再生していきます。
従来は金属製の膜を使用していたため、治癒後に膜を除去する処置が必要でしたが、現在は体内で自然に吸収される安全な膜を使用できるようになり、1回の処置で完了できるケースも増えています。
01
ポケット内の清掃、歯肉を切開し骨が足りない部分を綺麗にします
02
骨補填剤を入れメンブレン膜で骨再生スペースを確保
03
手術後4ヶ月〜6ヶ月ほど安静にして骨再生を待ちます
04
骨が再生して見た目的にも、機能的にも改善されます。
歯肉移植術
歯周病が進行すると、顎の骨が溶けるとともに歯ぐきが下がってしまいます。
その結果、歯が長く見える・歯の根が露出してしみるなどの症状が現れることがあります。
一度下がった歯ぐきは、自然に元の位置へ戻ることはありません。
そこで当院では、「歯肉移植術」という方法で歯ぐきを回復させる治療を行っています。
この治療法では、上あごの裏側の健康な歯ぐきの一部を採取し、歯ぐきが下がってしまった部分に移植します。
これにより、歯ぐきに厚みとハリが出て、自然で美しい見た目を取り戻すことができます。
また、移植によって歯の根の露出が防がれ、しみやすさの改善にもつながります。
深い歯周ポケットの歯石を取り除く
歯周外科治療
歯ぐきには、歯と歯ぐきの境目にある小さな溝「歯周ポケット」があります。
この部分に歯周病菌が入り込むと、歯ぐきや骨などの組織が徐々に破壊され、歯周ポケットはどんどん深くなっていきます。
進行するほどポケットの奥に汚れや歯石が溜まりやすくなり、一般的な歯石除去(スケーリング)だけでは、深い部分の歯石や感染源を完全に除去することが難しくなります。
そのため、重度の歯周病や深い歯周ポケットがある場合には、「歯周外科治療」を行い、歯ぐきを一部開いて奥深くの汚れまで徹底的に除去します。
これにより、歯周組織の再生と健康な状態への回復を目指します。
フラップ法
フラップ法(FOP:Flap Operation)とは、歯周ポケットの深い部分にある汚れや歯石を歯ぐきを開いて直接確認しながら除去する外科的治療法です。
通常の歯石除去では届かないような歯根の奥深くに付着した歯垢・歯石・感染組織を、目で確認しながら丁寧に取り除くことができます。
これにより、歯ぐきと歯の根の再付着を促し、深くなっていた歯周ポケットを浅く・健康な状態に回復させる効果が期待できます。
ルートセパレーション
ルートセパレーションは、奥歯の歯周ポケットが深い場合に行う歯周外科治療の一つです。
同じく分岐部を処置するトンネリング法と並び、奥歯の根の部分(根分岐部)に細菌がたまりやすいケースに適しています。
この治療では、歯を根の部分で分割し、各根の表面を丁寧に清掃・除菌していきます。
細菌の温床となりやすい根分岐部を除去することで、歯周ポケットの改善と炎症の再発防止を目的としています。
治療後、歯ぐきが治癒した段階で、歯間ブラシを通しやすく、清掃しやすい形状の被せ物(クラウン)を装着し、患者さん自身でのセルフケアがしやすい環境を整えます。
ここまでご紹介した歯周外科治療は、歯周病の進行度や全身の健康状態によって、適応できる処置や治療法が異なります。
当院では、お口の状態だけでなく、全身の健康や生活背景も踏まえた総合的な診査・診断を行い、患者様一人ひとりに最も適した安全で確実な治療方法をご提案しています。
歯周病の改善を左右する「生活習慣」
「歯周病はお口の中の問題」と思っていませんか?
実は、歯周病は全身の健康にも深く関わる病気であることが、近年の研究で明らかになっています。
歯周病が進行して歯ぐきに炎症が起こると、出血した部分から歯周病菌が血管内に入り込み、全身を巡ります。
その結果、全身のさまざまな臓器に影響を与え、病気を引き起こしたり、悪化させたりすることがあります。
また、逆に生活習慣が乱れている方ほど歯周病になりやすいこともわかっています。
たとえば、肥満の方は脂肪組織から「TNF-α(ティーエヌエフアルファ)」という物質が多く分泌され、それが顎の骨を溶かして歯周病を進行させる要因になるといわれています。
近年では、歯周病が次のような全身疾患と関連していることも報告されています:
糖尿病
アルツハイマー病
脳梗塞
狭心症・心筋梗塞
早産・低体重児出産
このように、歯周病はお口だけでなく全身の健康に直結する病気です。
そのため、歯科医院での治療だけで完治するものではなく、日々の生活習慣の見直しも欠かせません。
当院では、正しいブラッシング指導や生活習慣のアドバイスも含め、再発を防ぎ、健康な状態を維持できるサポートを行っています。
まずは、しっかりと歯周病を治療し、歯周病菌を増やさない健康な口内環境を一緒に整えていきましょう。
